ソーラーカーポートは、企業や工場の駐車場スペースを有効活用しながら、太陽光発電とEV充電を同時に実現できる発電インフラです。屋根置き太陽光パネルの設置が難しい建物に後付けするよりも導入しやすく、電気代の削減やESG経営への対応、BCP対策など、経済的・社会的に多くのメリットがあります。 本記事では、ソーラーカーポートのメリット・デメリット、設置費用を左右する要素や補助金から、設置後に後悔しないためのコツまで、企業担当者が知っておきたい情報をわかりやすく解説します。
ソーラーカーポートは、カーポートの屋根に太陽光パネルを搭載し、発電と車両の保護ができる設備です。まずは、その仕組みや種類を解説します。
ソーラーカーポートは、太陽光パネルを屋根として備えたカーポートを指し、設置形式は、屋根とパネルが一体化したものと、既存のカーポートに後付けするタイプの2種類があります。 車両の駐車スペースとしての機能を保ちながら、屋根で発電を行うため、駐車スペースは従来のまま活用でき、発電した電力はEV(電気自動車)の充電や建物の消費電力として活用できるという仕組みです。 再生エネルギーの導入とエネルギーインフラ整備を同時に実現できる、効率的な設備といえます。
ソーラーカーポートには、大きく分けて「一体型」と「搭載型」の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
どちらのタイプも、駐車場で発電を行い、事業所などへの電力供給やEV(電気自動車)の充電を可能にします。土地の活用やエネルギー効率を高めたい企業にとって、有力な選択肢といえるでしょう。
一般的な太陽光発電は、建物の屋根にパネルを設置する「屋根置き型(搭載型)」が主流です。しかし、以下のような課題があります。 ・古い建物では耐荷重・耐震性の問題から設置が困難なケースがある ・構造確認や補強工事、申請に時間とコストがかかる 一方、ソーラーカーポートは、社屋や工場などの建物とは異なる、独立した駐車場として設置します。建物の状態に左右されないため、屋根置きができない場合の有効な代替案になりえます。 駐車場を活用することで、太陽光パネル設置のハードルを下げることが可能になるのです。
企業や工場におけるソーラーカーポートの導入は、電気代削減、災害対策、環境経営など多くの課題を解決してくれます。ここでは、代表的な6つのメリットを詳しく紹介します。
ソーラーカーポートを導入する最大のメリットは、電気代の削減です。発電した電力を、照明・空調などの設備、生産設備や作業場の電源など幅広く活用できます。とくに、日中の使用電力が多い業種では、太陽光発電との相性が良く、大きな節電効果が期待できます。 また、EV充電設備を整備すれば、社用車や従業員のマイカーに充電できる環境が整います。福利厚生になるだけでなく、EVの導入を後押しする効果も期待できます。
再生可能エネルギーの活用は、温室効果ガスの排出削減になり、地球温暖化対策に貢献します。ソーラーカーポートの導入は、企業の脱炭素経営の姿勢を示す具体的な手段になります。また、ESG投資(※)の観点からも有効で、積極的に地球環境に貢献する会社として、イメージの向上につながるでしょう。 ※ESG投資:環境・社会・ガバナンスに配慮した企業へ投資する投資手法。
ソーラーカーポートは、EV(電気自動車)や充電スタンドと非常に相性が良く、以下のような利点があります。 ・発電した電力をそのまま社用EVや従業員のEVマイカーへ充電可能 ・日中の発電時間帯に充電すれば、電力会社からの購入電力量を削減できる ・充電コストの低減につながり、社員の福利厚生にもなる さらに、V2H(Vehicle to Home)を導入すれば、非常時にはEVの電力を建物へ供給できます。これは、BCP対策(事業継続計画)に役立ち、災害時の非常用電源として活用できます。 企業にとってソーラーカーポートの導入は、電力の自給自足とEV充電への活用とを同時に叶える、持続可能なインフラ整備の一環になるのです。
事業所の建物が古く耐震性に不安がある場合、後付けで太陽光発電システムを導入しようとしても、屋根への設置ができないケースがあります。 しかし、敷地内に駐車場スペースがあれば、ソーラーカーポートの設置により、太陽光発電の導入が可能になります。駐車場の上の空間という使われていないスペースを、発電に活用できる、効率の良い代替策となるでしょう。
ソーラーカーポートは、カーポート本来の機能を持ち合わせているため、以下のように、車の保護や快適性に役立ちます。 ・車両を直射日光や雨から守る ・夏場の車内温度上昇を抑える ・雨天時の乗り降りを快適にする さらに、EV充電環境を整えれば、従業員が職場で安価に充電できる福利厚生の一環になり、働きやすい環境づくりに一役買ってくれるでしょう。
ソーラーカーポートの導入にあたっては、「中小企業経営強化税制」の対象となり、以下のいずれかの税制優遇を受けることが可能です。
自家消費率が50%未満の場合は、「中小企業投資促進税制」で優遇措置が受けられます。導入前に適用条件を確認し、税理士と相談がおすすめです。
ソーラーカーポートには多くのメリットがありますが、一方で導入前に把握しておきたいデメリットや注意点も存在します。ここでは代表的なリスクと対策を解説します。
ソーラーカーポートは、以下の2つの点から初期費用が高額になりやすい傾向があります。 ・カーポート本体に加えて太陽光パネルや電気工事が必要 ・素材の質やパネルの発電性能によって価格に差がある 初期費用は施工業者により異なるため、複数の業者に見積もりを取り説明を聞くとともに、価格と性能を比較検討することがポイントです。
ソーラーカーポートの発電量は、設置場所の環境に左右されます。日光を遮る建物や木があると、十分に発電ができないケースも考えられます。
導入前には、発電シミュレーションと実績がある業者の現地調査が欠かせません。事前に発電効果を把握し、設置の可否や位置を検討することが重要です。
ソーラーカーポートは、太陽光パネルの下に車を駐車することから、「特殊建築物」にあたります。そのため、建築基準法、消防法などを遵守した設計・施工・管理の必要があり、設置する際には建築確認申請が必要です。
建築確認申請は、着工前と工事完了後の2度の審査が必要で、建築主が申請を行います。しかし、申請には専門的な知識が必要なため、通常、建築士や施工業者に代行を依頼して手続きを行います。
一般的に、屋根と柱のみのカーポートであれば、固定資産税の対象外とされています。しかし、ソーラーカーポートの場合、太陽光発電設備の出力が10kW以上になると課税対象となります。
企業に設置する場合は、大容量システムを導入することが多いため、設置前に固定資産税額をシミュレーションし、コストに組み込んだ計画を立てましょう。
ソーラーカーポートの導入には費用がかかりますが、費用は設置場所の条件などにより大きく変動します。また、補助金制度を正しく把握すれば、導入時の負担の軽減に役立つこともあります。ここでは、費用と補助金のポイントを紹介します。
ソーラーカーポートの設置費用は、駐車台数や規模、仕様によって大きく異なります。 設置にかかる費用を左右する要素を表にまとめました。これらは業者に相談する際のポイントにもなります。
見積もり時に現地調査が行われ、各要素が明確になります。早めに問い合わせと相談を行うことをおすすめします。
ソーラーカーポートを導入する際に活用できる補助金制度がいくつか実施されています。
■企業向け国の補助金 国の補助金としては、環境省の「再生可能エネルギー事業者支援事業費(ソーラーカーポート)」が挙げられます。この補助金は、申請すれば必ず利用できるわけではなく、事業の規模やその後の安定的な維持管理体制などを審査し、採択された場合にのみ利用が可能になります。 補助金制度の情報を収集した上で、施工業者に相談し、提案を受けることがポイントといえるでしょう。
■企業向け自治体の補助金 ソーラーカーポートに利用できる補助金制度を設けている自治体もあります。 たとえば、東京都であれば、「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」など複数の補助事業が実施されています。 補助事業がない自治体もあるため、利用を検討する際には、補助金の有無の確認を行いましょう。また、補助対象になる対象事業者・公募期間・条件など詳細もしっかり把握することが大切です。
ソーラーカーポートは長期的な投資となる設備です。導入後に「想定と違った」と後悔しないための事前準備が大切です。導入を成功させるための具体的なコツを紹介します。
ソーラーカーポートの導入には、事前シミュレーションを行うことが重要です。導入までの発電量チェックのステップをご紹介します。
このステップを踏むことで、導入後に「思っていたより発電しなかった」といったリスクを避けられます。
ソーラーカーポートの導入には、信頼できる設置業者選びが何より重要です。適切な業者を選ぶポイントを押さえておきましょう。
また、価格だけでなく、業者のもつ提案力やサポート体制にも注目しましょう。
ソーラーカーポートの導入とあわせて検討したいのが、EV充電器やV2H(Vehicle to Home)機器といった併設設備です。EV充電器を設置すれば、社用車や従業員のマイカーがEVであれば充電が可能となり、福利厚生にもつながります。
さらにV2Hを組み合わせれば、EVに蓄えた電力を建物に供給することが可能になるため、災害時の非常用電源として活用できます。
導入時に、将来的な運用を見据えて併設設備を検討しておくことが、効率的な運用につながるといえるでしょう。
ソーラーカーポートは、企業や工場での再生可能エネルギー活用と、発電インフラの整備を同時に実現できる手段です。建物に屋根置きができないケースでも、駐車場に導入が可能で、電気代の削減、ESG投資対応、BCP対策など多くのメリットがあります。
まずは太陽光発電とEV設備に強い専門業者に相談し、最適な設備構成を検討することが導入成功への第一歩です。